臍帯血、どの血管を採取したらいいの〜
出てきた値は、どう評価したらいいの?
臍帯血の血液ガス分析は、分娩前の胎児の低酸素状態や、アシドーシスの状態を評価するための指標になります。また新生児の蘇生や出生後の全身状態に大きく影響があるので、血ガス分析を理解できなければ生まれた赤ちゃんの重症度が分かりません。
この記事では、臍帯血の血液ガス分析の測定方法と評価方法を理解しやすいようにまとめました。
臍帯血ガスに不安がある方は、ぜひ最後まで読んでみてくださいね。
臍帯血ガス なぜ調べるの?
そもそもどうして臍帯血ガスを測定するの?
血液ガス分析とは、血液中に溶けている酸素や二酸化炭素を測定し、身体のバランスを判断することで、その人の全身状態を知る指標になります。
胎児が母体に血液を送り返す臍帯動脈は、動脈と名前がついていますが、胎児の静脈血の成分です。そのため胎児の状態を反映している臍帯動脈の血液ガス分析を調べることで、分娩時にストレスで低酸素およびアシドーシスの状態があったかどうかを知り、分娩管理が適切に行われていたかの判断材料の1つになります。
臍帯血の採取方法
- ヘパリン入り1mLシリンジとポータブル血液分析器(i-STAT)を分娩30分前に冷所から常温に置いておく。
- 児の娩出後、母体の会陰部にできるだけ近い箇所で臍帯を止血鉗子でクランプし、これ以上血液が児側に流れてこないようにする。
- 児の臍帯を左手でしごき、止血鉗子と臍帯クリップで止め、その間を臍帯剪刀にて切断する。
- 胎盤娩出前に、臍帯の表面の羊水や血液をガーゼで拭きとる。
- 児から胎盤に流れる臍帯動脈(細い血管)を穿刺し、血液を少量採取する。
- 間接介助者に渡し、血液ガス分析装置で測定する。
穿刺忘れがち
臍帯血ガス測定って、本当に焦ってたりすると忘れがちですよね。児の娩出に時間を要したりすると、ふぅやっと出た〜とか、赤ちゃんの蘇生大丈夫かな、と焦ってしまって、その勢いで胎盤娩出までやってしまうんですよね。私も何回かあります…反省。
なので、児娩出後はまず落ち着いて臍帯動脈血を採取し、その後、ゆっくりと胎盤娩出の手技に進みます。
どれを穿刺するの?
どの血管を穿刺したらいいの?
静脈か動脈か分かりづらいよ〜
臍帯は、約50cmの長さ、約2cmの太さがあり、3本の血管が含まれています。
そのうちの1本が太い静脈で、残りの2本は細い動脈です。
母体(胎盤)→臍帯静脈(1本、太い)→胎児→臍帯動脈(2本、細い)→母体(胎盤)
そもそも、
・「動脈」 → 心臓から血液を送り出すための血管
・「静脈」 → 心臓に血液を送り返すための血管
であるため、母体の心臓を基準に考えてしまうと違和感を覚えるかもしれませんが、臍帯についての「動脈」「静脈」の区別は、胎児の心臓を基準にして行われています。そのため、胎児が母体に血液を送り返すための血管は「臍帯動脈」となります。
臍帯動脈は胎児の血液を母体に送り返すための血管であるため、胎児の体内を巡った血液(静脈血)が流れており、胎児の状態を表しています。
なので、臍帯血液ガス測定時は、臍帯動脈(細い方)を穿刺します。
覚えにくかったら、細い方!穿刺しずらい方!と覚えましょう。
間違って臍帯静脈を穿刺したらどうなるの?
あれ、pHの値が高すぎるぞ、どうしてだろう
間違えて太い臍帯静脈を穿刺した場合、pHが高値を示すことがあり、そこで気づく場合もあります。
臍帯動脈血を採取しているか、間違いがないか確認が必要ですね。
検体を機械にかけるのを忘れがち
直接介助の助産師は出血対応や胎盤処理など、他の対応をしていることが多いです。そのため、外回りに入るスタッフが忘れずに検体を機械にかけます。また、直接介助者が声掛けを行い、機械にかけるのを忘れないようにしましょう。
声をかけ合って、間接介助者とのコミュニケーションが大切ですね。
臍帯血ガス値の評価
臍帯動脈血液ガスの正常値
採取した臍帯血ガスを値を見て、評価する必要があります。
これは丸暗記しましょう。
平均 | 範囲 | |
pH | 7.27 | 7.15〜7.38 |
PCO2 (mmHg) | 50.3 | 32〜68 |
HCO3– (mmol/L) | 22.0 | 15.4〜26.8 |
BE (mEq/L) | -2.7 | -8.1〜0.9 |
臍帯血pHの正常値
人間の血液のpHは、正常であれば7.35~7.45程度(弱アルカリ性)ですが、臍帯動脈血は正常であっても、より酸性に近いアルカリ性(7.15~7.38程度)であることが多いです。
この数値が低くなりすぎると、アシドーシスの所見が認められます。アシドーシスとは、血液が正常なときよりも酸性に近付いた状態のことであり、様々な疾患によって血中の二酸化炭素濃度が上がること等の影響で生じます。
酸塩基平衡について復習したい方はぜひ以下の記事も参考にしてみてくださいね。
臍帯血pHの変動
酸性に傾くことをアシドーシス、アルカリ性に傾くことをアルカローシスといいます。人間の体の中ではCO2、つまり二酸化炭素が貯留するとアシドーシスに、逆に二酸化炭素が減少するとアルカローシスになります。
ストレスのかかっていない赤ちゃんでも、生まれたばかりはアシドーシスの状態です。アシドーシスの中でも、呼吸性アシドーシスに分類されます。
人間の血液のPCO2 の平均が35〜45なのに対し、上の表を見てみると「臍帯血PCO2 の平均が50.3」というのはかなり高めでアシドーシスの状態を表しています。
臍帯血pHは、胎児が受けたストレス等の影響によって変動します。そのため、分娩直後の臍帯血pHを調べることは、分娩管理が適切であったか否かを判断する材料になります。臍帯血pHが正常であれば、胎内で低酸素状態になっていなかったことが推測できます。
しかし、娩出時に急激な低酸素血症となった場合、臍帯血pH値はあまり低下しません。
え、そうなの?
臍帯血pH値の低下は、長時間、低酸素状態となっていたことを示し、また、低酸素状態の程度が低くても長時間そのままの状態が持続して出生した場合には非常に低い値を取り、予後が悪いとされています。
つまり、臍帯血pHは低酸素状態の持続時間を示す重要な指標となります。
特に臍帯血pH7.0未満は、児の状態がかなりよくないことを表しています。逆にpHが7.38を超える場合はアルカローシスと判断します。
BE(塩基過剰)
base excess(ベースエクセス)の略語です。
HCO3-の過不足を表しているだけの数字なので、他の3つに比べるとそこまで重要度は高くありません。血液ガスで得られたpHやPaCO2、HCO3-などの数値から算出されます。
体内のアルカリの増減、つまり、血液のpHをpH 7.40へ戻すために必要な酸の量を表しています。
・BEがマイナス → 酸が不要 → 代謝性アシドーシス
・BEがプラス → 酸が必要 → 代謝性アルカローシス
と判断されます。
新生児は呼吸性アシドーシスの状態で生まれてきます。そのためBEの平均値は-2.7とアシドーシスの状態です。正常範囲は -8.1〜0.9で、−8.1より低いとアシドーシスがかなり進んでいることを表しています。
さいごに
臍帯血の血液ガス分析を理解しやすいようにまとめました。
臍帯血ガスは、赤ちゃんの出生時の状態や、予後を調べることだけでなく、分娩の経過を通し、自分のケアと分娩の進め方、CTGモニターの判読などが適切であったかを振り返る指標になります。
どんなお産であっても分娩後は、パルトグラムやCTGモニターと一緒に血液ガス分析を振り返り、アセスメントして次の分娩介助に活かしましょう。