【助産師が知っておきたい】酸塩基平衡

勉強

血ガスを勉強していたら、酸塩基平衡がわからなくなったよ

酸塩基平衡ってなんだっけ?

皆さんこの分野はとても苦手意識が強いのではないでしょうか。
私はとても苦手で、学生の時に中途半端にしか勉強しなかったせいで、社会人になってからかなり勉強し直しました。

教科書や参考書を読み漁ったり、わかりやすい動画をYouTubeに上げているのを見たりして、私なりに1番わかりやすい理解の仕方をしたので、今日はそれを一緒に見ていきましょう。

助産師がここを理解すると、血ガスを見て瞬時に赤ちゃんの状態を把握し、処置の必要性やその後の行動を理解できるかなと思います。

助産師たまじ
助産師たまじ

酸塩基平衡に苦手意識がある方はぜひ最後まで見てみてくださいね🎵

酸塩基平衡をわかりやすくイメージしよう

まず、この難しい言葉の羅列を理解しましょう。

・酸…H+を放出する
・塩基…H+を受け取る
・平衡…バランスをとる

つまり、酸塩基平衡とは、「体内の酸と塩基のバランスをとる」という意味です。

私たちは食べたり飲んだり、なにかしらの活動をすると、細胞から酸性のゴミを体の中に生み出してしまいます。例えば、乳酸、リン酸、硫酸などです。

体内で生み出される酸性のゴミには2種類あります。

・CO2(揮発性酸)
・H+(不揮発性酸)

これは、H+ : CO2 = 1 : 20000 で、圧倒的にCO2の方が多いです。

酸性のゴミが体の中に溜まっているのは良くないので、これを排泄します。

排泄方法には2つあり、それが肺と腎臓です。

・肺 呼吸することで体内の酸性ゴミ(CO2)を排出している。
・腎臓 排尿することで体内の酸性ゴミ(H+)を排出している。

H+とHCO3-は拮抗

H+ : CO2 = 1 : 20000 からも分かるように、CO2の方が圧倒的に多いので、肺だけじゃ排泄しきれず肺は疲れてしまいます。そのため、CO2  をH +に変換させて腎臓にも排泄を手伝ってもらいます

その式が以下になります。

CO2 + H2O ⇄ H2CO3 ⇄ H+ + HCO3-

見たことありますよね。一つ一つ意味を理解していきましょう。

人間が何らかの活動をすることで、細胞からCO2が排出されます。

体内の水といえば、血液のことです。血液は血漿成分と血球成分に分けられ、血漿の9割が水、つまり血液の半分が水と言えます。なのでこのH2Oは血液だという認識でOKです。

そして、CO2が水(血液)に溶けると炭酸(H2CO3)になりますが、血液がシュワシュワの炭酸になると困りますよね。なのでH2CO3は、H+(水素イオン)とHCO3-(重炭酸イオン)に分解されます。

H+は酸性ゴミ。H+になれば、腎臓からアンモニア(NH4)として排出されます。

この流れは逆もあり得ます。

H+が増えると、腎臓だけじゃ排泄しきれないので、肺にも手伝ってもらおうとします。

腎臓からHCO3-(重炭酸イオン)が産生されます。それがH+と合わさってH2CO3(炭酸)になります。血液がシュワシュワの炭酸になっては困るので、CO2と水に分解され、CO2は肺から排泄されます。

つまり、HCO3-(重炭酸イオン)が増えれば増えるほどH+がCO2となって排泄されていくので結果的にH+は減少していきます。

つまり、水素イオンが増えれば、重炭酸イオンは減り、水素イオンが減れば、重炭酸イオンは増えます。

・H+↑ ならば、 HCO3-↓
・H+↓ ならば、 HCO3-↑

肺が障害されたら腎臓がカバーし、腎臓が障害されたら肺がカバーするということですね。

また、この反応は、HCO3-やCO2がゼロになるまで続くわけではありません。肺と腎臓が協力することでちょうど良いところで釣り合っています。
そのちょうどいいところというのが、pH7.35〜7.45という適正範囲なのです。

pHとは

ついに来た、pH…ということで、次はpHについて見ていきます。

まず私たちの体は、酸性とアルカリ性のものでできています。

<酸性>
H+、CO2、硫酸、乳酸、胃酸(pH1〜2の強酸性)

<アルカリ性>
HCO3-(重炭酸イオン)、ヘモグロビン、タンパク質、腸液、膵液
(膵液にはHCO3-が含まれています。胃酸の強酸性だけだと体の中がただれてしまうので胃酸を中和するためにアルカリ性です)

pHとは、酸性かアルカリ性かどちらに傾いているかを表したパラメーターのようなもので、溶液中のH+(水素イオン)の濃度を表しています酸性の液体はH+が多い液体アルカリ性の液体はH+が少ない液体と考えます。

・pH1〜6   酸性(H+の濃度が濃い)
・pH7    中性
・pH8〜14   アルカリ性(H+の濃度が薄い)

悩める犬
悩める犬

H+が多いときにpHの数値が少ないって、数字が逆じゃん〜っ

そうですね、このpHは何を表しているかと言うと、0の数を表しています。
どういうことかというと、H+の濃度が0.1の水溶液とH+の濃度が0.00000001の水溶液があったとすると、H+の濃度が0.1の水溶液の方が、H+の数が多いですが、0の数はH+の濃度が0.00000001の水溶液の方が多いです。この0の数を表しているのがpHなのです。なので、H+濃度が低いアルカリ性の方がpHが高くなるのです。

血液のpHは7.35〜7.45

正常な血液のpHは7.35〜7.45です。

もしこの数字を覚えるのが難しかったら、7.4で覚えておきましょう!私はイメージで覚えるのが覚えやすいので、7と4で、梨…と覚えました。
何の脈絡もないけど、赤ちゃんが梨を食べてるところをイラストなんかに描いてイメージして覚えてます。数字だけで覚えるより、なにか印象付けて覚える方が私は頭に入りやすかったです。

まず、「細胞のpH7.0 (中性)のとき、血液のpH 7.35〜7.45 (弱アルカリ性)」です。

どうして血液は弱アルカリ性かと言うと、細胞からCO2が排泄されており、そのCO2は酸性であるため、それを受け取る細胞外液、つまり血液は、その酸性を中和するために弱アルカリ性になるということです。

そもそもなぜ人の血液細胞外液が、pH7.35〜7.45の間に維持されないといけないのかというと、人の体は約37兆個の膨大な数の細胞からできています。その細胞が代謝を行うことで生命が維持されています。

代謝とは、体外から取り入れた物質から体に必要なエネルギー源を取りだす化学反応です。

呼吸によって取り入れた酸素や、食べ物を食べて取り入れた栄養素から”ATP”というエネルギーを作ります。すると、細胞の中の酵素というタンパク質が働き、代謝が促進され、そのゴミとしてCO2や老廃物を細胞の外に出しています。

そしてこの酵素が最も活性化する水素イオン濃度が、pH7.35〜7.45ということです。

このpHが正常値から外れると酵素がうまく働かず、体にトラブルが生じます。だから、pH7.35〜7.45の間に調整するためは、酸塩基平衡で、体内の酸と塩基のバランスをとっているんですね。

細胞のpHを調べる際、毎回細胞に針をさしてpHを調べる事は困難です。そのため、「細胞のpHが7.0の時、血液のpH は7.35〜7.45」という性質を利用します。

採血で血液のpHを調べることで、間接的に細胞のpHを調べることができるのです。

アシドーシス、アルカローシス

血液のpHが酸性に傾くことをアシドーシス血液のpHがアルカリ性に傾くことをアルカローシスといいます。

  • 血中の酸が増加すると、H+が増加し(pH)、アシドーシス
  • 血中に塩基が増加すると、H+が減少し(pH↑)、アルカローシス

血ガスの正常値を覚えよう

まず、大前提として、正常値を覚えましょう。

・pH:体が酸性かアルカリ性かを判断する

正常:7.35〜7.45

7.35未満 →アシドーシス

7.45以上 →アルカローシス

・PaCO2:体内のCO2の量

正常:35〜45

35未満 →アルカローシス

45以上 →アシドーシス

・PaO2:体内の酸素量

正常:80〜100

呼吸不全を見るのに使用します。今回は使用しません。

・HCO3:間接的に水素イオンを見る。

正常:22〜26

22未満 →アシドーシス

26以上 →アルカローシス

この、HCO3-で間接的に水素イオンを見るというのは、「CO2+H2O⇄H2CO3⇄H+ + HCO3-」の式からも分かるように、以下のことが分かります。

重炭酸イオンが少ない水素イオンが多いアシドーシス

重炭酸イオンが多い水素イオンが少ないアルカローシス

呼吸性?代謝性?

呼吸性か代謝性かは、PaCO2とHCO3のこの2つの指標を使っていきます。逆に言うと他の指標は見なくても良いということです。

PaCO2 =呼吸性の指標

・低い→CO2が低い=息吐きすぎ→H+が少ない→アルカローシス

・高い→CO2が高い=息吐けない→H+が多い→アシドーシス

HCO3 =代謝性の指標

・低い→逆にH+が高い→アシドーシス

・高い→逆にH+少ない→アルカローシス

呼吸性アシドーシス

呼吸が原因のアシドーシスを、呼吸性アシドーシスといいます。

・呼吸ができない
→呼吸できないので、酸性ゴミ(CO2)が体内に溜まっていく
→体内は酸性に傾く(アシドーシス)
呼吸性アシドーシス

CO2がはけない疾患は、呼吸性アシドーシスになりやすいです。例えば、CO2がはけない状態は閉塞性換気障害(COPD、気管支喘息など)があります。

呼吸性アルカローシス

呼吸が原因のアルカローシスを、呼吸性アルカローシスといいます。

・過換気症候群
→呼吸が多い状態=CO2を吐きすぎな状態
→CO2(H+)の酸性ゴミが少ない
呼吸性アルカローシス

代謝性アシドーシス

呼吸以外が原因のアシドーシスを代謝性アシドーシスといいます。

・腎不全
→排尿できないので、酸性ゴミ(H+)が体内に溜まっていく
→体内は酸性に傾く(アシドーシス)
代謝性アシドーシス

また、代謝性アシドーシス→体内の酸を減らしたい→CO2を体内から排泄するため、呼吸数を増やす という症状も見られます。

・飢餓状態
→細胞に糖が不足する
→代わりに脂質が分解される(糖の代わりにエネルギーとなる)
脂質が分解される際にケトン体(酸性の物質)が産生される
代謝性アシドーシス(ケトアシドーシス=ケトン体が過剰に増えた状態)

・頻回の下痢など
→アルカリ性である膵液、腸液の排泄
→HCO3-が排泄される
→逆に、H+が増える
代謝性アシドーシス

・ビタミンB1不足
→乳酸(酸性の物質)が産生される
→代謝性アシドーシス(乳酸アシドーシス)

代謝性アルカローシス

呼吸以外が原因のアルカローシスを代謝性アルカローシスといいます。

・嘔吐
→強酸性の胃酸が排泄される
→H+が減る
代謝性アルカローシス

例題を解いてみよう

さて、これまでの知識を活かして例題を解いてみましょう。全部で8問用意してみました。

助産師たまじ
助産師たまじ

繰り返し解くことで、知識が定着して行きますよ。

問1

血ガスを読みましょう。

pH 7.47 PaC02 30 HC03 24

解き方としては、

①まずpHをみてアシドーシスかアルカローシスを判断し、

②PaCO2とHCO3を見て呼吸性か代謝性かを判断します。

この2点を押さえて解き進めていきましょう。

正解は、呼吸性アルカローシス

(解説)

pH 7.47→pHの正常は7.35〜7.45なので、アルカローシスです。

次に、どうしてアルカローシスか、つまりアルカリ性に傾いているのかを考えます。

呼吸が原因の呼吸性アルカローシスなのか、代謝が原因の代謝性アルカローシスか?

はい、次を見ていきましょう。

PaC02 30→PaC02の正常は35〜45なので、低い→H+が少ない→息を吐きすぎている

つまり、呼吸性アルカローシス

ちなみに、HC03 24→正常は22〜26なので正常範囲内。

問2

血ガスを読みましょう。

pH 7.23 PaCO2 36 HC03 14

正解は、代謝性アシドーシス

(解説)

pH 7.23→ pHの正常は7.35〜7.45なので、アシドーシス。

次に、PaCO2 36→ PaC02の正常は35〜45なので、正常範囲内。

さらに、HC03 14→ 正常は22〜26なので低い→逆にH+が多い→アシドーシス、つまり肺以外が原因なので、代謝性アシドーシス

問3

酸塩基平衡の異常と原因の組合せで正しいのはどれか。

1. 代謝性アルカローシスー下痢

2.代謝性アシドーシスー嘔吐

3.代謝性アシドーシスー慢性腎不全

4. 呼吸性アシドーシスー過換気症候群

正解は3

(解説)

1.下痢は肺以外が原因なので代謝性、腸液のHCO3-が排出されていくので、逆にH+が増えて、アシドーシス。つまり、代謝性アシドーシス。

2.嘔吐は肺以外が原因なので代謝性、胃液のH+が排出されていくのでH+が減って、アルカローシス。つまり、代謝性アルカローシス。

3.慢性腎不全は肺以外が原因なので代謝性、腎不全によってH+が排出されないので、H+が増えてアシドーシス。つまり、代謝性アシドーシス。

4.過換気症候群は肺が原因なので呼吸性、過換気症候群によってCO2が排出され過ぎてしまうので、H+が減ってアルカローシス。つまり、呼吸性アルカローシス。

問4

代謝性アルカローシスになるのはどれか。

1. 嘔吐

2.下痢

3.腎不全

4.飢餓

正解は1

(解説)

1.嘔吐→肺以外が原因なので代謝性。また、胃酸H+が排出される→H+が減るのでアルカローシス。つまり、代謝性アルカローシス。

2.下痢→肺以外が原因なので代謝性。また、腸液HCO3-が出ていき、H+が増えるのでアシドーシス。つまり、代謝性アシドーシス。

3.腎不全→肺以外が原因なので代謝性。また、排尿できないのでH+が捨てられず貯まるため、アシドーシス。つまり、代謝性アシドーシス。

4.飢餓→肺以外が原因なので代謝性。また、ケトン体(酸性の物質)を産生するのでH+が増えてアシドーシス。つまり、代謝性アシドーシス。

問5

呼吸困難を訴えて来院した患者の動脈血液ガス分析は、pH7.32、動脈血炭酸ガス分圧くPaC02>72TorI、動脈血酸素分圧くPa02>50Tort、HC03-26.0mEq/Lであった。このときのアセスメントで適切なのはどれか。

1.肺胞低換気

2.過換気症候群

3.代謝性アシドーシス

4.呼吸性アルカローシス

正解は1

悩める犬
悩める犬

記号や数字が沢山できてきて、キャーっ

大丈夫、落ち着きましょう。これまで見てきたように、必要な値だけを読んでいけばいいので、Pa02なんてものは無視してOKです。

(解説)

まず、pH7.32→ pH7.35〜7.45が正常なので、アシドーシス。

また、PaCO2 72→PaCO2 35〜45が正常なので高く異常。CO2が多いので、H+が多い状態→呼吸性アシドーシス。

HCO3- 26→22〜26が正常なので問題なし。つまり、呼吸性アシドーシス。

1.肺胞低換気→肺が原因なので、呼吸性。また、肺で換気が出来ていない→CO2が溜まっていく→H+が排出できない→H+が増える→アシドーシス。つまり、呼吸性アシドーシス。

2.過換気症候群→肺が原因なので呼吸性。また、過換気症候群によってCO2を排出しすぎてしまう→H+が減る→アルカローシス。つまり、呼吸性アルカローシス。

問6

呼吸性アシドーシスをきたすのはどれか。

1.飢餓

2.過換気

3.敗血症

4.C02ナルコーシス

5. 乳酸アシドーシス

正解は4

(解説)

1.飢餓→呼吸以外が原因なので代謝性。

2.過換気→肺が原因なので呼吸性。また、過換気によってCO2が排出されていくのでH+が減る→アルカローシス。つまり、呼吸性アルカローシス。

3.敗血症→肺以外が原因なので、代謝性。

4.C02ナルコーシス→肺が原因なので、呼吸性。また、CO2ナルコーシスは、COPDの酸素療法による合併症で、CO2が体内に溜まっていくため、H+が増える→アシドーシス。つまり、呼吸性アシドーシス。

5. 乳酸アシドーシス→肺以外が原因なので、代謝性。

問7

糖尿病性ケトアシドーシスで血中濃度が低下するのはどれか。

1.尿素窒素

2.ケトン体

3.水素イオン

4.重炭酸イオン

正解は4

(解説)

2.ケトアシドーシスは、アシドーシスなので酸性に傾くことを意味するため、ケトン体(酸性の物質)が増える。

3.アシドーシスでは、水素イオン(H+)は増える

4.アシドーシスでは、重炭酸イオン(HCO3-)は減る

問8

血中濃度が増加したときに呼吸を促進するのはどれか。

1.水素イオン

2.塩化物イオン

3.重炭酸イオン

4.ナトリウムイオン

正解は1

(解説)

1.水素イオンH+が増える→アシドーシス→逆に酸を減らしたい→呼吸を増やしてCO2を減らす

3.重炭酸イオンHCO3-が増える→アルカローシスになる→逆に酸を体に溜めたい→CO2を体に貯めたい→呼吸数は減る

さいごに

いかがだったでしょうか。1つずつ見ていくと分かりやすいですよね。ここまでやれば、だいぶ理解できたのではないでしょうか。

血ガスデータを読めるようになると、瞬時に赤ちゃんの状態を把握し、処置の必要性やその後の行動を理解できるかなと思います。

助産師たまじ
助産師たまじ

さあ、一緒に頑張りましょう。

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