赤ちゃんが産まれてきた時にコブのようなものがあったよ!
これって放っておいても大丈夫?
産まれてきた赤ちゃんの頭にコブがあるとびっくりするかもしれませんね。
実は、赤ちゃんの頭のコブには3種類あります。
その3種類は次の3つです。
鑑別が必要な赤ちゃんのコブ
・産瘤
・頭血腫
・帽状腱膜下血腫
この記事では、この3つのコブについて分かりやすく解説していきます。
この3つの違いがあやふやな人は、ぜひ最後まで読んで見てみてくださいね。
分娩損傷とは
まず分娩損傷についてお話しします。
分娩損傷とは、分娩時に外からの刺激によってお腹にいる胎児や新生児に生じた損傷のことを言います。
正常分娩でも起こりますが、吸引分娩、鉗子分娩、巨大児、骨盤位分娩などで、より起こりやすくなっています。
分娩損傷の中でも、頭部損傷には、以下のものが挙げられます。
・産瘤
・頭血腫
・帽状腱膜下血腫
・頭蓋内出血
・眼球、耳損傷
・頭蓋骨骨折
今回解説する、産瘤、頭血腫、帽状腱膜下血腫は、これらの中でも主な分娩時頭部損傷です。
赤ちゃんの頭の構造
そもそも、赤ちゃんの頭はどうなっているの?
赤ちゃんの頭を拡大すると、下の図のように、何層にもなっています。
外側から、
①皮膚
②帽状腱膜
③組織
④骨膜(骨の皮)
⑤頭蓋骨
そして、これから紹介する3つのコブは、
血液や水分がどこに溜まっているか?
によって区別されます。
それでは、3つのコブについて具体的にみていきましょう🎵
産瘤
部位 | ①皮膚と、②帽状腱膜の間に水が溜まる |
発生 | ・狭い産道を通ってくることで圧迫され、滲出液が貯留することで浮腫が生じる (普通の出産でよく起こる) ・出産直後より著明 |
構造と特徴 | ・骨縫合を越える ・パツンと張っているので波動性なし。容易に圧入される ・境界線不明瞭 ・先進部に1個のみ |
消失時期 | ・24〜36時間 |
処置 | ・特に治療はせず経過観察 |
産瘤は、分娩の時にできる皮下の浮腫です。
赤ちゃんは、お母さんの産道を通るとき、頭の形を変形させながら降りてきます。その時、先頭となる頭が、産道を押し広げるときに、強く圧迫されます。
第1胎向では右頭頂骨後部に、第2胎向では左頭頂骨後部にできます。
つまり産瘤は、児頭先進部前在側に形成されます。
圧迫された部位の体液やリンパ液などの流れが滞りうっ血が起こり、浮腫が起こります。
産瘤は、お産を頑張った証です。すぐに治るので心配は入りませんよ。
退院の頃には、コブは元通りの頭の形に戻っているんだね🎵
頭血腫
部位 | ④骨膜と、⑤頭蓋骨の間に血液が溜まる |
発生 | ・狭骨盤、吸引・鉗子分娩により骨膜(骨の皮)が頭蓋骨から剥離し、骨膜直下の導出静脈が破綻することにより血液が溜まって生じる ・生まれた直後にはなく、半日から1日してあらわれ、数日のうちにさらに大きくなる |
構造と特徴 | ・骨縫合を越えない ・波動性あり(手で触るとプヨプヨした柔らかさを感じる) ・境界明瞭 ・2個以上のこともある |
消失時期 | ・生後数週〜数ヶ月 |
処置 | ・特に治療はせず自然吸収されるのを待つ |
赤ちゃんの頭蓋骨は複数の骨が集まってできています。それぞれの骨は骨膜という骨の皮に包まれ、骨と骨膜との間に出血して血液がたまった状態を頭血腫といいます。
頭血腫は一カ所だけでなく、別々の骨の上に同時に発生することもあります。ただし、骨の継ぎ目を超えてコブができることはありません。“骨縫合を越えない”というのはそういう意味です。
血液が溜まっているので、高ビリルビン血症を伴うことがあります。また、吸収されなかった血液は石灰化します。
ビリルビンの値が高いと、黄染療法という治療をすることもあるよ。
帽状腱膜下血腫
帽子みたいな名前だな〜
そうだね、帽子をかぶっているかのように出血しているんだよ。
部位 | ③組織と、④骨膜の間に血液が溜まる |
発生 | ・吸引分娩などにより帽状腱膜と骨膜が剥離し、その間隙に存在する導出静脈が破綻することにより血液が溜まって生じる ・生まれてから数時間で現れる |
構造と特徴 | ・骨縫合を越える ・波動性あり(手で触るとプヨプヨした柔らかさを感じる) ・境界不明瞭 ・出血が頭部全体に広がり、前額、眼瞼、耳介周囲に及ぶことがある ・大量出血による貧血や、チアノーゼ、出血性ショックを引き起こし、赤ちゃんが亡くなることもある |
消失時期 | ・生後1〜2ヶ月 |
処置 | ・出血量によって、大量出血に対する処置が必要になる (出血性ショック、DICの管理、輸血など) |
大量出血により、高度貧血、高ビリルビン血症を伴い、出血性ショック、DICから死に至ることがあります。
早期発見が大切になるので、吸引分娩で生まれた赤ちゃんは慎重に観察していく必要がありますね。
産瘤、頭血腫の穿刺は、感染の危険性が高いため原則として行わないよ。
さいごに
赤ちゃんの頭にできる3つのコブについて解説しました。
生後間もない赤ちゃんの頭にコブができると、とても心配になると思います。
3つのコブの違いを理解し、特に帽状腱膜下血腫は出血が多い場合、高度な貧血やショックに陥る場合があるため、早期発見できるようにしっかりと赤ちゃんの状態を観察しましょう。
またママは不安があればいつでも医療者に相談しましょう。